原風景

壜に詰めた春

通勤途中の車窓。目の前に満開の桜並木。高架上だったから桜色の雲の中にいるような気分になった。 小学生の頃、歩いて30分くらいの湖畔公園によくピクニックに行った。その公園はまだ整備されていなくて、ゆるやかなカーブの道でつながっているいくつかの芝…

たこたこあがれ

仕事に身が入らず、ぼーっとしていたら、視界を白いものが横切った。窓辺を見やると、子どもが凧を揚げているようだ。骨のないぐにゃぐにゃの凧。 小学校の頃、凧揚げ大会があって、そのために冬休みに凧を作るのだけれど、父親が工作好きなものだから、私の…

今朝の夢

立て替える前の我が家。小さい子がどうしても入りたいというので、一緒にいえにあがると、お座敷にはたくさんの透明な筒があり、その筒の一本一本には、透き通るような緑色の水草と、鮮やかな金魚が一匹づつ。赤紫色で細く枝分かれしたひれを持つもの、赤と…

七五三

ホームに袴着姿の男の子。傍には両親と祖父母。お宮ならまだしも、こんなところで見かけることは珍しく、思わず同じ車両に乗り込んだ。破魔矢の鈴をちりんちりん鳴らしてうれしそうにしている。今日は季節外れの台風が近づいており、その子の足元も長靴。雨…

鈴虫

秋になるときまってお座敷に鎮座まします水槽。中にはたくさんの鈴虫。あれは誰が持ってきていたのだろう。リーンリーンと大合唱。暗い廊下をひたひた歩いて障子を開けるとぴたっと止む。息をころして水槽を覗き込む私。しばらくすると小さい体を震わせなが…

いま ないた からすが もう わらった

昨日、とてもくやしいことがあり、感情の針が振り切れてしまったのであとは涙ということになりました。で、思い出したこと。 小さい頃、よく祖母に言われた言葉。「いま ないた からすが もう わらった」 ほんとうによく泣く子だったのです。そこに、母親が…

一粒万倍日*1

祖父の座っていた席の後ろの壁にはカレンダー。後ろが透けるほど薄い乳白色の紙。そっけない数字のわきには、小さく、しかし堂々たる存在感で、旧暦と六曜が書いてある。その中でも目をひいたのが、一粒万倍日。「ひとつぶまんばいび、ひとつぶまんばいび」…