一粒万倍日*1

 祖父の座っていた席の後ろの壁にはカレンダー。後ろが透けるほど薄い乳白色の紙。そっけない数字のわきには、小さく、しかし堂々たる存在感で、旧暦と六曜が書いてある。その中でも目をひいたのが、一粒万倍日。「ひとつぶまんばいび、ひとつぶまんばいび」唱えてみると、いかにも元気がありそうな言葉。その時の私の頭の中には、カリン様の仙豆が思い浮かんでいた。

一粒万倍日(いちりゅうまんばいび、いちりゅうまんばいにち)とは、選日の一つである。単に万倍とも言う。
「一粒万倍」とは、一粒の籾(もみ)が万倍にも実る稲穂になるという意味である。一粒万倍日は何事を始めるにも良い日とされ、特に仕事始め、開店、種まき、お金を出すことに吉であるとされる。ただし、借金をしたり人から物を借りたりすることは、苦労の種が万倍になるので凶とされる。

ひとつぶまんばいびではなかった!