電車待ちのホーム。日を浴びる線路、敷石、ぐっと見上げて青い空。ソメイヨシノ開花宣言、満開にはまだ早いのに紅白提灯ぶらさがり、行き交う人も春爛漫。私が首に巻いている布はもう季節外れで景色から浮いている。前に並ぶ男性の足下に、色も抜けてしわのよったイチョウの葉が一枚。所在なさげにコンクリの上の枯葉と私、冬はどこだ、北風はどうした。男性の左足が枯葉を踏んだ。次の瞬間、東からの風がやって来て、砕けたかけらを吹き飛ばした。