風に飛ばされる以前の話

 ある本を読んでいて思い出した。小学生の頃はどの子も誕生日になると自ら招待状を書いて友達を呼び“おたんじょうかい”を開いていた。畳敷きのお座敷でサンドイッチやから揚げが入った大皿に何種類かのジュース、みんなでハッピーバースデイを歌ってケーキのろうそくを消した。わいわいとカードゲームなんかもしたように思う。花札もどんじゃらも初めて知ったのは確か友達の誕生会だった。
 大きくなるにつれ誕生日は誰かが祝ってくれるのを待つようになった。誰も私におめでとうを言ってくれないのではないかと憂鬱な時間を過ごすようになるのはなぜだろう。あの頃のように自分から「25日は わたしの たんじょうびです。おたんじょうかいをしますので ぜひきてください」と言えばいい。
 くさくさしてるようでいて、疎遠になっていた友達から電話が来て妹からメールをもらい小さい人からカードを渡されたのでハッピーバースデイ。ありがとう。

 
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 当時、本屋は文房具屋を兼ねていたし、洋服と生地の店ではハンカチやリボンなどが買えたし、瀬戸物屋ではなぜかファンシーグッズが豊富だった。田舎ならではの混沌とした店内は何が出てくるか分からない面白さがあったな。