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 自分の部屋で文学を読むことができないのは目に見えない何かが居着いてしまいそうなのが怖いからで、私の読書スペースは主に通勤電車や喫茶店だ。読み始めると渦巻いて立ち上る煙、煙。そのうちに魔法のランプさながら亡霊が現れる。書き手を離れてなお飛んではねる彼らは本を閉じても帰る気配がない。そこで私はこっそりその場に置き去るか家に着くまでに払い落とす。しかしここ最近独りぽっちが身に染みるので得体のしれないものを居座らせておくのも一興かもねと夜更けの部屋で頁を繰っている。ぎゅうぎゅうぐしゃぐしゃお詰め合わせて満員電車は出発いたします。